「長良川鵜飼、一度は見てみたいと思っていたけど、なんとなくハードルが高くて…」
そんな気持ちを長年抱えていたのですが、今回ついに行ってきました。
利用したのは、長良川温泉の老舗旅館「十八楼」の鵜飼宿泊プラン。夕食後に旅館から船着場まで案内してもらえる、初心者にはありがたいコースです。
実際に参加してみて感じたのは、「もっと早く来ればよかった」という一言に尽きます。
この記事では、十八楼プランを使った当日の流れ・見どころ・所要時間・注意点まで、初めての方が知りたいことを全部まとめました。
長良川鵜飼とは?

長良川鵜飼は、岐阜市を流れる清流・長良川で1300年以上続いてきた古典漁法。 鵜匠(うしょう)と呼ばれる漁師が、手縄で操る鵜(ウ)に鮎を捕らせるその姿は、日本の夏の原風景とも言えます。
毎年5月11日〜10月15日の期間中、金華山の中腹にそびえる岐阜城をバックに、かがり火に照らされた幻想的な光景が夜の長良川に広がります。
現在も6人の鵜匠が宮内庁式部職に任命された「御料鵜匠」として、国の重要無形民俗文化財に指定されながら伝統を守り続けています。
※長良川で皇室に献上する鮎を操る鵜匠さんは、宮内庁の「非常勤国家公務員」。世襲制で、鵜匠の家に生まれた男子のみが跡を継いで、伝統を守っています。
※木曽川で鵜飼をする、犬山鵜飼の鵜匠さんは地方公務員。女性の鵜匠さんがいたり、昼鵜飼を見ることができます。
当日の流れ

十八楼の鵜飼宿泊プランは、夕食後に旅館スタッフが船着場まで案内してくれる「夕食後乗船コース」です。
集合・夕食の開始時間は?
鵜飼観覧船への案内が19:00に設定されているため、夕食は17:15頃スタート。
多少余裕を持って食堂に向かえるように、チェックインは早めがおすすめです。
浴衣で行ける?
十八楼の館内はもちろん、鵜飼も浴衣で参加可能。部屋に用意されているスリッパは外歩きも可能なので、浴衣の方もちらほら見えました。
鵜飼当日は雨だったので「汚れることはないけど、雨に濡れるのが気になるなら浴衣で行かれると、気楽かもしれませんね」とのこと。
この日は十八楼から2艘の船が出ましたが、浴衣の方は1割くらい、でした。
船着場へ移動
19:00にロビーに集合、熱中症対策のためにペットボトルの水が1人1本渡されました。名前が呼ばれて順番に船へ案内されました。
徒歩何分かかる?
十八楼の館内から専用の小路を通り、船着場まで徒歩約2〜3分ほど。
少し階段がありますが、移動の負担はほとんどありません。外に出ると目の前が乗船場。雨が降っていたんですが、傘の用意もされていて、至れり尽くせり。
乗船してからもスタッフさんが手を振ってくださって、なんか暖かい気持ちになりました。
暗くても歩ける?
夜の川沿いはライトアップされた提灯が並んでおり、足元は明るく整備されています。旅館スタッフが同行してくれるので迷う心配もありません。
船への乗り降りは川岸から一歩踏み出す形になります。足腰に不安がある方は、スタッフや船員に声をかけると補助してもらえます。
靴を脱いで、ビニール袋に入れて、乗り込みます。
乗船
ここがとっても気になるポイントかなと思うので、正直に言います。
座席は狭い?
乗合船の座席は畳敷きの桟敷(さじき)スタイルで、横に並んで座る形式です。定員は船によって異なりますが、隣の人とは座布団で隣同士なので、肩が触れ合う、とまではいかなくても結構近い距離。
「ぎゅうぎゅう」というほどではありませんが、広々とはしていません。 長時間正座は辛いので、あぐらや横座りで問題ありません。
クッションはある?
船内に座布団が用意されています。1人1人救命具が用意されていて、それを座布団の下に敷くと、少し高くなるので、座るのに楽かも、と船頭さんが教えてくれました。
高齢者でも大丈夫?
長良川は川のため波が穏やかで、船の揺れはほとんど気になりません。公式サイトでも「たくさんの高齢者や妊婦の方が乗船している」と案内されています。
今回、85歳の母を連れていきましたが、乗り降りの際は船頭さんが手を取って助けていただきました。船のへりに座れるくらいのスペースがあって、母はそこに座布団をのせて座っていました。
トイレはどうなっている?
トイレが付いている船もあるようですが、基本的にはない、と考えた方がよさそうです。乗船時間は約1時間半くらいです。
船内で食事をしていた船では、途中「トイレに行きたい人はいませんか?」と声かけがあって、何人かが船を下りて河原を歩いていくのを見かけました。
「トイレに行った人がまだ戻ってこないんです」って困ってる船があって、クライマックスの総がらみ(一斉の追い込み)を見るための船の並びの順番を抜かされていました。
実際に見た鵜飼の見どころ

鵜匠は、手縄(たづな)と呼ばれる細い縄でつないだ鵜を、同時に10〜12羽操ります。すべてを把握して操る様子は、まるでアスリートのよう。
映画俳優チャールズ・チャップリンが「鵜匠はアーティストだ」と賞賛したのも納得の技巧です。
使われているのはウミウという種の鳥で、体長約90cm。ペリカンに近い仲間で、潜水してすばやく魚を捕らえる能力に長けています。
喉に「輪縄」を緩めに巻くことで大きな鮎を飲み込めないようにしており、捕らえた鮎を鵜匠が手で取り出します。鵜の動きをよく見ていると、水面に飛び込んでは浮かび上がる素早さに驚きます。
鵜飼に出る鵜は1日1食。前日の夜から何も食べていない腹ペコの鵜たちは、鮎だけでなく、川の魚を捕り、小さな魚は飲み込んで自分の腹も満たしていきます。
鵜にもいろんな性格があって、小さな魚だけ狙って食べる、ちょっとズルい(働かない)鵜もいたりするんだとか。鵜匠はそれぞれの性格を見抜いて、働かせなきゃいけないので大変です。
かがり火の迫力
鵜飼の象徴ともいえるのが、船先で赤々と燃える「かがり火(篝火)」。
夜の川面に映る炎の揺らぎは、写真や映像で見るよりもずっと迫力があります。暗闇の中で炎だけが浮かび上がる情景は、「1300年前の人もこれを見ていたのか」という感覚を呼び起こします。
観覧船と鵜舟の距離は、近い場面では目の前5〜10mほどまで近づくことがあります。かがり火がまばゆいくらいの近さで、鵜と鵜匠の動きを間近で見られます。これは予想以上の迫力でした。
クライマックスの「総がらみ」

鵜飼のフィナーレを飾る最大の見せ場が「総がらみ(そうがらみ)」です。
鵜飼の終盤、複数の鵜舟が横一列に並んで川幅いっぱいに展開し、川を下りながら一斉に鮎を追い込んでいきます。
それまでバラバラに動いていた複数の船が、号令とともに一体となって動く瞬間は圧巻。観覧船の上から見ると、かがり火が横一列に並ぶ光景は絵のような美しさです。
「終わりに向かっているんだ」と分かるので、この場面になったらカメラを構えて待ち構えましょう。
その後、観覧船の間で、鵜から魚を捕りだす様子も見せてくれます。ちょっと暗い中での作業なので、船の場所によっては良く見えないかもしれません。
鵜が捕った魚を船頭さんが見せてくれました。
実際に行って感じた良かった点

- 想像以上に近い
テレビや写真で見ていたときは「遠くから眺めるもの」だと思っていましたが、実際は違いました。
観覧船から鵜舟まで5〜10mほどの距離まで近づく場面があり、鵜匠の表情や鵜の動き、水しぶきまではっきりと見えます。「こんなに近いのか」というのが最初の驚きでした。
- 雨でも濡れない
雨が降っていましたが、風が強くなかったので、船の中で濡れることはなかったです。台風などの大雨は中止になりますが、よっぽどの荒天でない限り、中止になることは少ないそうです。
- 川の上は涼しかった
夏の岐阜は日中かなり暑くなりますが、夜の川の上は想像よりずっと涼しく感じました。川からの風が心地よく、むしろ5月・9月・10月は上着が必要なほどです(公式でも推奨しています)。
真夏でも川風で涼みながら観覧できるのは、陸から眺めるより快適な点です。
- 1300年の歴史をリアルに感じた
現地に立って、長良川の清流と金華山・岐阜城を背景に見ると、「松尾芭蕉もここに立って同じ光景を見ていたのか」という感慨が生まれます。
有名な句「おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな」の意味が、実際に見ると少し分かる気がしました。
- 鵜飼説明
船着場では17:45から鵜匠による鵜飼説明があります(自由見学)。 鵜の習性や漁の方法をわかりやすく説明してくれるので、聞いておくと鑑賞がぐっと深まります。
また、船頭さんも待ち時間にいろんな話をしてくれるので、興味を持って見ることができますよ。
気になった点・注意点【これを知っていれば安心】

初めて参加するときに気になりやすいポイントをまとめました。
暑さ・寒さ対策は?
夏(7〜8月)でも夜の川の上は風があって意外と快適ですが、日中の移動は暑さ対策が必要です。 5月・9〜10月は川の上が冷えるため上着を持参することを公式サイトでも推奨しています。
秋口の鵜飼に行く場合は薄手のカーディガンや羽織りを1枚持っておくと安心です。
虫は多い?
雨だったので、虫の存在は全く感じませんでした。ただし、口コミなどでは「川沿いのため、乗船前の待ち時間に刺されることがある」とのこと。
心配な場合は虫除けスプレーを事前につけておくといいかもしれませんね。
船酔いは心配?
長良川は川のため波が穏やか。公式サイトにも「海と違い、さほど波はないため船の揺れを心配する必要はありません」と明記されています。
実際に食事の後の乗船でしたが、全く気になりませんでした。
ただし「不安な方は念のため酔い止め薬を」というアドバイスも公式にあります。心配な方は事前に服用しておきましょう。
写真撮影はスマホで撮れる?
明るいうちや遊覧中は問題なし。鵜飼が始まる夜間は暗いため、スマホのカメラではブレやすくなります。
夜景モードや暗所撮影に強いスマホのカメラ設定を使うか、写真よりも「目に焼き付ける」を優先する割り切りも大事です。
フラッシュは鵜が驚くため禁止なので注意。
こんな人におすすめ
- 歴史・文化が好きな人
1300年以上続く伝統漁法を実際に目にする体験は、どんな博物館の展示よりもリアルです。
松尾芭蕉が詠んだ鵜飼、織田信長・徳川家康が見物した鵜飼と同じものを今も見られる、という事実だけでロマンを感じる方にはぜひ。
- 夫婦旅行・シニア旅行に
「二人で特別な夜の体験を」という夫婦旅行にぴったり。船は揺れが少なく、体力的な不安も少ない。
十八楼のような温泉旅館とセットにすれば、夕食→鵜飼観覧→温泉という理想的な旅の流れが作れます。
- 岐阜城観光とセットで
昼間に岐阜城(金華山)を観光して、夜に鵜飼という1日コースがおすすめ。昼間に見上げた岐阜城を背景に、夜は川の上から同じ景色を眺めるという体験は、岐阜旅行を濃密にしてくれます。
※岐阜城は令和9年10月末まで休館中ですが、ロープウェイは運行しています。
長良川うかいミュージアムで鵜飼の歴史を予習してから行くと、より楽しめますよ。
- 「どこか非日常な体験をしたい」という方
川の上で篝火を眺めながら、静かな夜の時間を過ごす体験は、テーマパークや観光スポットとは違う種類の感動があります。
長良川の鵜飼いまとめ
長良川鵜飼は、「一度は見たいと思っていたけど、なかなか動けなかった」という方が多い観光体験ですが、実際に行ってみるとハードルの低さと感動の大きさのギャップに驚きます。
特に十八楼の宿泊プランは、夕食→案内→乗船→帰宿という流れが全部セットになっているので、初めての方でも迷わず安心して参加できます。
個人的に一番印象的だったのは、鵜舟との距離の近さと、総がらみのクライマックスの美しさです。
岐阜に行く機会があれば、ぜひ1日のスケジュールに鵜飼観覧を入れてみてくださいね。
