明治村に来て、「とりあえず地図を見ながら歩く」だけでも楽しいのですが、建物の背景を少し知ってから見ると、まったく違って見えてきます。
明治村には東京ドーム約21個分の敷地に、全国各地から移築した明治時代に建てられた建物68棟が点在しているので、全部を見ようとすると1日では足りません。
この記事では、歴史好きの目線で「ここは外せない」と思う建物を10棟に絞ってご紹介します。
明治村に行かれる際にはぜひ参考にしてくださいね。
歩き方のポイント
敷地は1丁目から5丁目に分かれています。正門から入ると1丁目で、奥へ進むほど5丁目になります。高低差があるので、歩きやすい靴は必須です。
【おすすめの歩き順】
正門(1丁目)→ 2丁目 → 3丁目 → 4丁目 → 5丁目と順番に進むのが基本ですが、村内バスも使いながら自分のペースで動くのがいいです。
建物ガイド(定時)がある建物もあるので、到着したらまずガイダンスセンターで当日のスケジュールを確認してみてくださいね。
明治村のおすすめ建物10選!
明治村に行ったら、ぜひここで写真を撮ってほしいおすすめスポットをご紹介します。
① 聖ヨハネ教会堂(1丁目)

明治40年に京都に建てられた教会で、1階がレンガ造り、2階が木造という珍しい構造です。
外観のレンガと、内部の竹簾を使ったアーチ型の天井の組み合わせが独特で、どこかエキゾチックな雰囲気があります。
2階には3方に大きな窓があって、光がたっぷり入る明るい空間が広がっています。
ステンドグラスの色彩と自然光の組み合わせが美しく、時間によって見え方が変わります。正門からすぐ近くなので、入村してまず立ち寄りたい建物です。
② 森鴎外・夏目漱石住宅(2丁目)

森鴎外と夏目漱石、2人の文豪がそれぞれ借家として使った和風住宅です。2人が同じ家に住んでいたわけではなく、時期をずらして住んでいました。
夏目漱石がこの家に住んでいたとき、「吾輩は猫である」を執筆したというのが、歴史好きにはたまらないエピソード。
何気ない縁側や畳の部屋が、あの作品が生まれた場所と思うと、空間が違って見えてきます。
2人の文豪の暮らしの場を一度に見られる、というのも明治村ならではです。
③ 清水医院(2丁目)

中山道の木曽路に建てられた洋風建築の医院で、島崎藤村の姉が入院していたことがあり、小説「ある女の生涯」のモデルになった場所です。
入口のアーチ型の窓と、土間に面した畳の待合室、その奥の診察室という間取りに、明治の医院の空気が残っています。
文学と建築が重なる場所として、歴史好きには見ごたえがあります。
④ 西園寺公望別邸「坐魚荘」(3丁目)

第12・14代内閣総理大臣を務めた西園寺公望が、政界引退後に清水港近くの海岸に建てた別邸です。重要文化財に指定されています。
「坐漁荘(ざぎょそう)」という名前からして、引退後の静かな暮らしへの思いが感じられます。1階には3面に窓を入れた明るい洋間があり、全部の雨戸が1か所の大きな戸袋に収まる仕組みになっています。
角の部分の雨戸をどうやって動かして閉めるのか、実際に見ると不思議な構造です。
天井や欄間、お風呂の天井まで竹細工の装飾が施されていて、職人の技を随所に感じられます。庭の木々も一緒に移設されていて、入鹿池を海に見立てた庭園の眺めが美しいです。
NHKドラマ「わろてんか」や「まんぷく」のロケ地としても使用されました。
⑤ 芝川又右衛門邸(3丁目)

大阪の商人・芝川又右衛門の別荘として建てられた和洋折衷の建物で、外観は洋風ながら内部は和の要素が随所に生きています。網代とヨシズを市松模様にした天井も必見。
特に面白いのが2階の和室にある押入れ。ふすまを開けると中が暖炉になっています。外から見てもまったく気づかない仕掛けで、「え、ここに暖炉?」という驚きがあります。
玄関横のステンドグラスは、昼と夜で雰囲気がまったく変わります。昼間の光を透かした色彩と、夜に内側から照らされた色彩を見比べると、同じものとは思えません。
阪神淡路大震災(1995年)が起こる前まで実際に人が住んでいた住宅で、震災後に明治村に移築されたという歴史もあります。
⑥ 高田小熊写真館(3丁目)

明治41年頃に新潟県に建てられた洋風木造2階建ての写真館で、明治村のおすすめスポットランキングの常連です。
2階のスタジオはガラス張りの屋根で自然光を取り入れる工夫がされていて、当時の撮影技術が伝わってきます。
面白いのが、体を固定するための首おさえや胴おさえのイス。写真を撮るのにしばらくじっとしていなければならなかった時代の道具です。
愛らしい外観と、中の意外な展示の組み合わせで、ついつい長居してしまう場所です。
⑦ 呉服座(4丁目)

大阪府池田市に建てられた芝居小屋で、重要文化財に指定されています。「呉服座(くれはざ)」って読めなくて、そのまま「ごふくざ」って呼ぶことが多かったようです。
また、呉服座のマークが、「座」の文字の周りに5人のお福さんの横顔が丸く囲んでいるので、「五福座(ごふくざ)」と呼ばれていたとも言われています。
中に入ると、江戸時代の芝居小屋の名残がそのまま残っています。
手動の廻り舞台、4名まで入れる升席、左右の桟敷席と花道……現役の劇場として使われていた当時の姿がここまで残っているのは、なかなか貴重です。
芝居だけでなく政治演説会も行われていたというのも、明治という時代らしい話です。
⑧ 聖ザビエル天主堂(5丁目)

明治23年に京都に建てられたカトリック教会で、外観と内部の落差が面白い建物です。外壁はレンガ造りにしっくい塗りですが、内部は木造で組まれているという特徴的な構造。
中に入ると色鮮やかなステンドグラスが広がっています。色ガラスに模様を描き、外側に透明ガラスを重ねて保護するという作りで、外から見るとモノトーンなのに内側に入ると全然違う。
この「外と中の違い」を確かめながら入るのがおすすめです。
⑨ 大明寺聖パウロ教会堂(5丁目)

明治12年に長崎県伊王島に建てられた教会で、外観は一見すると普通の農家です。
禁教令が解除された直後の時代に建てられたという背景を知ってから見ると、この「目立たない外観」に意味があることが伝わってきます。
中に入るとゴシック様式の教会になっていて、その意外性がこの建物の一番の見どころです。
正面右側には、聖母マリアが現れたとされるルルドの洞窟を再現した場所があります。竹細工に泥を塗って岩を表現した素朴な作りで、当時の信者たちの祈りの形が伝わってきます。
⑩ 帝国ホテル中央玄関(5丁目)

大正12年に建てられた帝国ホテルの中央玄関部分(全体の8分の1)で、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの設計によるものです。
京都の平等院鳳凰堂をモチーフにした左右シンメトリーの外観に、大谷石とレンガを組み合わせた重厚感があります。
特に見てほしいのが3階まで吹き抜けになったロビー。軒や手すりに施された幾何学模様の彫刻も、細部まで見れば見るほど発見があります。

ホテルのオープン初日(大正12年9月1日)に関東大震災が起きたんです。周囲の建物が次々と倒壊・炎上する中、帝国ホテルはほとんど無傷だったという話が伝わっています。
ライト設計の柔構造が功を奏したといわれますが、建物自体が「生き残った」歴史を持つというのが印象的です。
館内の喫茶室では、ライトがデザインした六角形の背もたれのイス(ピーコックチェア)のレプリカで休憩できます。
5丁目の奥まで歩いてきた足を休めるのにもちょうどいい場所です。
ボランティアガイドを活用するのもおすすめ

当日・現地予約のボランティアガイドツアーに参加すると、建物の詳しい背景を聞きながら歩けます。「坐魚荘」「芝川又右衛門邸」「呉服座」では定時の建物ガイドもあります。
一人でじっくり歩くのも楽しいですが、ガイドさんの話を聞きながら回ると「なるほど」の連続で、同じ建物がまた違って見えてきます。
明治村の所要時間と楽しみ方!乗り物・体験・グルメをまるごとガイド
明治村のおすすめ建物まとめ
明治村の建物は、「見る」だけでなく「中に入れる」ものがほとんどです。
外観を眺めて通り過ぎるのではなく、中に入って、天井を見上げて、細部の細工に目を向けて——そうしていると、1棟でかなりの時間が経ちます。それくらい情報量の多い場所です。
歴史の教科書に出てくる人物の名前が、目の前の建物と直接つながる瞬間があって、そういうときの「あ、ここか」という感覚が、明治村ならではの楽しみだと思っています。
