常滑といえば焼き物の町、というのは知っていました。
でも実際に歩いてみると、想像していたのとだいぶ違いました。
細い坂道の両側に、土管が積み上がっている。黒く塗られた古民家の壁が続く。レンガ造りの煙突が、青空を背景にそのまま立っている。路地の奥に、昔のままの窯がある——。
「焼き物を買いに行く町」じゃなくて、「焼き物と一緒に生きてきた町の空気を歩く場所」だったんです。
観光スポットを見て回るより、ただ歩いているだけで発見がある。そういう場所です。
常滑やきもの散歩道とは?

常滑は日本六古窯のひとつとして知られる、古くからの焼き物産地。招き猫の生産量は日本一で、「招き猫の町」としても有名です。
明治から昭和にかけて、常滑では土管・焼酎瓶・陶器が大量に作られ、町全体が窯業で栄えていました。最盛期には大小3,000基もの窯があったといいます。
10本の煙突から黒煙がもくもくと上がり、スズメが煤で真っ黒になっていたという話が残っているほど。
その時代の窯・煙突・土管・黒い壁が、今も町に残っています。それが「常滑やきもの散歩道」です。
散歩道A・Bコースについて
やきもの散歩道には、AコースとBコースがあります。
Aコース(約1.6km):土管坂・登窯・廻船問屋瀧田家など、常滑の見どころが凝縮されたメインルート。初めての方はまずAコースをゆっくり歩くのがおすすめです。
Bコース(約4km):Aコースより広範囲を歩くルートで、体力と時間に余裕がある方向け。
常滑駅または常滑市陶磁器会館が起点になります。駅の観光案内所や陶磁器会館で観光マップを入手してから歩き始めると、迷わずに回れます。
なぜ人気なの?
整備された観光地ではなく、「昔の製造業の町がそのまま残っている」という希少さがあります。
土管・焼酎瓶・捨て輪が壁や路地に埋め込まれて、今も生活空間の一部になっている。そういう「生きた産業遺産」を歩ける場所として、写真好きや歴史好き、建築好きに人気があります。
実際に歩いて感じた常滑散歩道の魅力

やきもの散歩道の面白さは、「スポット」より「道の間」にあります。
細い坂道が折れ曲がり、両側に黒い壁が続く。石畳の足元には捨て輪の廃材が埋め込まれている。路地の奥に突然、古い窯の入り口が現れる。民家の軒先に、なにげなく常滑焼の鉢が置いてある——。
地図を見ながら歩くより、気になった路地に入ってみる、という歩き方が合っている場所です。迷っても大丈夫。それも含めて楽しい。
黒い壁は、石炭の煙や海からの強い風から家を守るために塗られたものです。「洗濯物も干せないような煙の町だったのかもしれない」と思いながら歩くと、その壁が違って見えてきます。
煙突や焼き物の風景が残っている

常滑散歩道でもっとも「常滑らしい」と感じる場所が、土管坂と10本煙突の登窯です。
土管坂は、明治時代の土管と昭和初期の焼酎瓶が左右の壁一面を覆っている坂道。
傷があって商品にできなかったものを再利用したもので、長さ約23m、両手を広げれば両壁に触れるくらいの幅しかない。
足元には土管を作るときの「捨て輪」が埋め込まれていて、すべり止めになっています。
「廃材を路地の壁に使う」という発想が、いかにも焼き物の町らしくて好きです。
10本煙突の登窯は、1887年頃に作られ1974年まで使われた、日本最大の現存登窯です。高さの違う10本の煙突が並ぶ姿は、離れた場所からでも目を引きます。

内部も見学できて、かつて職人たちが働いていた空間に入れます。
全長22m、傾斜17度の斜面に階段状に8つの焼成窯がある——今はもう使われていない静かな窯の中に立つと、なんとも言えない時間の厚みを感じます。
古民家カフェで休憩する時間も楽しい
坂道を歩いていると、古民家をリノベーションしたカフェや工房に出会います。
「どこのカフェがおすすめ」というより、「気になった扉を開けてみる」という感覚で入るのが常滑らしい楽しみ方。
焼き物の器でコーヒーが出てきたり、工房を兼ねていたり、それぞれの店の個性が面白い。
坂を登り切ったあとの一休みが、格別においしく感じられます。
“観光地すぎない空気”が心地いい

やきもの散歩道は、きれいに整備されすぎていません。
手作り感のある案内板、まだ現役の民家が並ぶ路地、地元の人が普通に生活している気配—「観光のために作られた空間」ではなく、「生活の延長線上に観光客が混じっている」という感じがします。
それが、50代以降の大人にとってはかえって心地いい。急かされる感じがなく、自分のペースで歩ける。写真を撮りながら、立ち止まりながら、ゆっくり歩くのに向いている場所です。
所要時間はどれくらい?

- Aコースをさらっと歩くだけなら、1時間ほど
- 土管坂・登窯・瀧田家などじっくり見るなら、2〜3時間
- カフェ休憩や陶芸体験も含めるなら、半日〜1日
登窯広場の展示工房館では常滑焼の絵付け体験ができます(所要約1時間、当日空きがあれば予約なしでも可)。時間に余裕があればぜひ。
坂道や歩きやすさは?
正直に言うと、坂は多いです。
土管坂・デンデン坂など、名前がついている坂だけでなく、散歩道全体にアップダウンがあります。「ちょっとしんどいな」と感じる場面はあるので、過信せず自分のペースで歩いてください。
50代でも歩けます。 ただし、スニーカーや底のしっかりした歩きやすい靴は必須です。ヒールや底の薄い靴は危ないです。
夏は暑くて虫が多い。 特に登窯周辺は夏場にヤブ蚊が多いので、虫除けスプレーを持参するのが無難です。日傘や帽子も必要です。
雨の日は滑りやすい。 石畳や土管坂は雨の後に滑りやすくなります。足元に注意しながら歩いてくださいね。
夕暮れ時に歩くのが個人的にはおすすめ。煙突や土管坂が夕日に照らされる風景は格別ですよ。
常滑散歩のついでに寄りたいスポット

常滑駅から散歩道へ向かう途中に、高さ3.8m・幅6.3mの巨大招き猫「とこにゃん」がいます。北山橋のふもとに鎮座していて、左手を挙げてお客を招いています。
招き猫通りには陶芸作家39人が制作した39体の陶製招き猫が並んでいて、それぞれ表情が違います。入口として歩きながら、一体ずつ見比べてみてくださいね。
廻船問屋瀧田家

1850年頃に建てられた母屋・土蔵・離れが残る、江戸時代の廻船問屋の旧宅。当時の生活道具や船道具を見学できます。
散歩道を歩くとルート上に自然に入ってくるので、通り抜けついでに立ち寄るのがおすすめです。
住所:常滑市栄町4-75
開館時間:9:30~16:30
休館日:水曜日(祝日は営業)・年末年始
見学料:300円(中学生以下無料)
登窯広場の展示工房館

登窯のすぐそばにある展示工房館は、常滑の陶芸文化を体験できる場所です。
館内には昭和55年まで実際に使われていた窯があって、中に入って見学できます。
太平洋戦争末期に燃料製造装置として作られた大きなカメの展示もあって、焼き物の歴史だけでなく、時代の痕跡まで残っています。
住所:常滑市栄町6-145
開館時間:9:30~16:30
休館日:水曜日(祝日は営業、翌日休み) 年末年始
入館無料(陶芸教室は実費)
神明社の常滑焼の狛犬

登窯の北側にある神明社は、散歩道のコースから少し外れますが、寄り道する価値があります。昭和17年に作られた常滑焼の狛犬が鳥居前に鎮座していて、筋肉隆々の勇ましい姿が印象的。
口を閉じている方(吽形)には角が生えているのが特徴です。
住所:常滑市栄町6-200
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常滑やきもの散歩道のアクセスと駐車場
電車の場合
名鉄名古屋駅から常滑線の特急で約28分、準急で約40分。「常滑駅」下車(ミュースカイは停車しないので注意)。
改札を出てガード下の観光案内所で観光マップを入手してからスタートするのがおすすめです。
車の場合
知多半島道路「常滑IC」から市街地方面へ約10分。
駐車場
常滑市陶磁器会館駐車場(40台・500円)、やきもの散歩道駐車場(45台・8時間300円)の2か所があります。
常滑やきもの散歩道まとめ
常滑は、「観光地を見る」より「町の空気を歩く」のが楽しい場所でした。
土管坂の狭い坂道、登窯の静かな内部、黒い壁が続く路地—どれも「観光のために作られたもの」ではなく、焼き物の町として生きてきた時間がそのまま残っているものです。
歩いているうちに、「この煙突が現役だった頃はどんな町だったんだろう」と想像し始めると、もう止まりません。そういう場所です。
名古屋から電車で30分かからない場所に、これだけの空気がある。ぜひ、スニーカーを履いて歩きに行ってみてくださいね。
※情報が変更されている場合もありますので、公式サイトなどで最新情報をご確認くださいね。
