岡崎に大樹寺という家康ゆかりのお寺があります。
「家康ゆかりの場所なら岡崎にいくらでもあるよね」と思いながら行ったんですが、位牌堂に入った瞬間に、「あ、これは違う」と感じました。
ずらっと並ぶ歴代将軍の位牌。それぞれ臨終時の身長に合わせて作られているんです。
大きいものも、小さいものも、ある。265年の江戸時代を支えた将軍たちが、位牌の高さという形で目の前に並んでいる。
「歴史上の人物」だった徳川将軍が、急に「本当に生きていた人」になる瞬間がありました。
家康が好きな方、歴史散歩が好きな方、ぜひこの記事を読んでから行ってみてくださいね。
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大樹寺とはどんなお寺?

大樹寺(だいじゅじ)は、岡崎市にある浄土宗のお寺です。正式名称は「成道山松安院大樹寺」。
「大樹」は「征夷大将軍」を表す唐名(中国式の官職名)で、1475年、家康より5代前の先祖が「松平家から将軍が誕生することを」祈願してこの名をつけました。
その願いが本当に叶ってしまうのですから、なんとも不思議なお寺です。
松平家・徳川家との関係
家康の遺言に「位牌は大樹寺に祀るべし」とあったことから、ここは松平家・徳川将軍家の菩提寺となりました。幕府からの財政援助もあり、かつては非常に大きなお寺だったと伝わっています。
山門と鐘楼は3代将軍・家光が家康17回忌に建立したもの。
境内から山門・総門を通して、約3km先の岡崎城が一直線に見える「ビスタライン」も有名で、今もこのライン上には大きな建物を建ててはいけない決まりがあります。400年守られてきた景観です。
岡崎の重要史跡
大樹寺は岡崎城と並ぶ、岡崎を代表する歴史スポットのひとつ。有料拝観(大人500円・小中学生300円)で大方丈・収蔵庫・位牌堂を見ることができます。
歴代徳川将軍の位牌がすごい!

位牌の大きさが身長に合わせられている
大樹寺の位牌堂には、徳川歴代将軍14代分の位牌が並んでいます。
ここで驚くのが、それぞれの位牌が将軍の臨終時の身長(等身大)で作られていること。これ、世界でも大樹寺だけなんだそうです。
家康の位牌は158〜160cmほど。当時の成人男性の平均身長が157cmだったので、ごく標準的な高さです(ちなみに体重は70kgだったとか……少しふっくら体型だったんですね)。
実際に見ると迫力がある
位牌堂に入ると、左右にずらっと位牌が並ぶ空間が広がります。
右手が松平7代の位牌、左手が歴代将軍の位牌。将軍の位牌は横一列に整然と並んでいて、高さがそれぞれ違う。見渡したとき、「あ、バラバラだ」とすぐにわかります。
その大きさの違いが、ただの数字ではなく、目の前にある。それがなんとも言えない迫力です。265年分の歴史が、この部屋に詰まっている感じがします。
将軍ごとの違いを見るのが面白い
歴代将軍の位牌の中で、特に目を引く2つがあります。
ひとつは5代将軍・徳川綱吉の位牌。
高さ124cm。「生類憐みの令」で知られる綱吉ですが、低身長症だったという説があります。ただ、享年64歳と長命で、当時の身体が弱かったわけではない。
この位牌の高さが何を意味するのか、はっきりした記録は残っていないそうです。謎が残るのが、また面白い。
もうひとつは7代将軍・徳川家継の位牌。
高さ135cm。家継は4歳で将軍に就任した史上最年少の将軍で、7歳で亡くなっています。現在の7歳の平均身長が約122cmですから、当時の子どもとしてはかなり背が高かったということになります。
4歳で将軍、7歳で死去——短すぎる生涯を、135cmの位牌が静かに語っています。
将軍一人ひとりの位牌の前に立ちながら、「この人はどんな人生を送ったのか」と想像していると、本当に時間が経つのを忘れます。
実際に歩いて感じた大樹寺の魅力

大樹寺は、観光地化されすぎていない場所です。
境内に入ると静かで、木の香りがして、落ち着いた空気が漂っています。参拝者はいますが、混雑しているわけではない。じっくり見て回るのにちょうどいい空間です。
位牌堂はもちろんですが、大方丈の障壁画も見応えがあります。幕末の絵師・冷泉為恭が描いた146面という大作で、金色の襖に描かれた風景はざわめきが聞こえてきそうなほど動きがある。
高級な絵の具を惜しみなく使う濃彩画の技法で、「1枚の絵画として飾りたい」と思うほどの迫力です。
本堂裏のしいの木(ツブラジイ)も印象的でした。樹齢460年以上、家康が19歳のときに植えたと伝わる大木。
折れやすい種類の木がこれだけ生き残っているのが不思議で、「家康が現代を見つめているみたい」という表現がぴったりだと思いました。
家康が見た「厭離穢土欣求浄土」も有名

桶狭間の戦いで今川義元が討ち死にしたあと、前途を悲観した若き家康は大樹寺に逃げ込み、自害しようとしました。
そのとき住職が説いたのが「厭離穢土 欣求浄土(おんりえど ごんぐじょうど)」という言葉。
「戦国乱世の穢れた国土を、平和な浄土にすることを願い求めるなら、必ず神のご加護を得て事を成すことができる」という意味です。
家康はこれを座右の銘として心に刻み、自害を思いとどまります。その後、岡崎城へ戻り、今川氏から独立、織田信長と同盟を結んで歴史の表舞台へ——。
大樹寺は文字通り、家康のターニングポイントになった場所です。
本堂内陣の左右にも「厭離穢土」「欣求浄土」の文字が掲げられていて、御朱印にもこの言葉が入っています。
ちなみにこのとき、家康を討たんと寺を囲んでいた野武士を、怪力の寺僧が門のカンヌキを抜いて撃退したというエピソードも残っています。
そのカンヌキは「貫木神(かんぬきじん)」として今も大樹寺の宝になっていて、同じサイズのレプリカがあるのですが——これが本当に重くて。
「これを振り回して戦ったのか……」と思わず笑いそうになりました。
所要時間はどれくらい?

- 位牌堂を中心にさらっと見るなら、30〜40分
- 大方丈・収蔵庫・境内をじっくり拝観するなら、1時間ほど
- 岡崎城周辺の散歩とセットにするなら、半日
位牌堂は有料拝観なので、拝観受付の時間(最終受付は季節により16:00〜16:30)に注意してくださいね。
住所:岡崎市鴨田町字広元5-1
宝物殿 拝観時間:
9:00~16:00(受付は15:50まで)
年中無休
大樹寺のアクセスと駐車場
電車・バスの場合
名鉄「東岡崎駅」またはJR「岡崎駅」から名鉄バス「大樹寺」行きで「大樹寺」バス停下車、徒歩約6分。またはJR「岡崎駅」から愛知環状鉄道で「大門駅」下車、徒歩約10分。
車の場合
東名高速「岡崎IC」から県道26号線で北上。岡崎城から国道248号で北へ約3km・10分ほど。
参拝者用駐車場あり、60分300円。
岡崎城と一緒に回るのもおすすめ

大樹寺と岡崎城は、ビスタラインで結ばれた一体の歴史エリアです。セットで回るとより楽しめます。
岡崎城
徳川家康生誕の城。天守からの眺望と合わせて、大樹寺との距離感(約3km)を実感するのも面白いです。
龍城神社
岡崎城の敷地内にある神社で、家康と徳川家ゆかりの地として参拝者が多い場所。大樹寺で家康の「ターニングポイント」を感じた後に訪れると、つながりが深まります。
八丁味噌の蔵
岡崎名物「八丁味噌」の工場見学ができます。岡崎城から八丁(約870m)の距離にある「カクキュー」「まるや」の2社が有名。
歴史散歩の後の食事に、八丁味噌を使った料理を楽しむのも岡崎らしい締め方ですね。
・岡崎城の所要時間は?実際に行った感想と周辺の見どころまとめ
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まとめ
大樹寺に行く前、「家康ゆかりのお寺」という以上の期待はしていませんでした。
でも位牌堂に入って、ずらっと並ぶ将軍たちの位牌の高さを見たとき、何かが変わりました。
124cmの綱吉。135cmの7歳の家継。158cmの家康。それぞれの高さが、それぞれの人生を静かに語っている。
「歴史上の人物」としか思っていなかった徳川将軍たちが、位牌を見て初めて、本当に生きていたんだと感じられました。
歴史の教科書には載っていない、でも現地でしか感じられないものが、大樹寺にはあります。岡崎を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてくださいね。
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